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ジャズマンガ界の進撃の巨人「BLUE GIANT」

photo by Dani Alvarez Cañellas

先日は曲がりなりにも進撃の巨人を取り上げたということで、今回は巨人つながりということで「BLUE GIANT」を紹介してみたい。

概要

仙台に住む高校生の宮本大が、ライブハウスでジャズを聞いたのをきっかけに、テナーサックス片手に世界一のジャズプレイヤーを目指すというものだ。
作者は山岳救助を題材とした漫画「岳」でお馴染みの石塚真一。
2015年8月現在、6巻まで刊行している。

BLUE GIANT(1) (ビッグコミックス)

BLUE GIANT(1) (ビッグコミックス)

BLUE GIANT 6 (ビッグコミックススペシャル)

BLUE GIANT 6 (ビッグコミックススペシャル)

BLUE GIANTはマンガという音が出せない表現方法の中で、いかに音楽を表現しようかを模索している。
奏者のアクションや表情、そして演奏を聴く観客の仕草や表情もが、音楽を表現する上で音が出ないというハンデを埋めている。
音を表現する音符も、フォントを写植しているのではなく、ジャズのリードシートに描いていそうな感じの手描きだ。
楽器の描画にしても、荒々しいペンタッチや陰影がむしろパーツ一つ一つまで描かれた緻密な絵よりもリアル感が出ている。

こういったマンガにおけるジャズの表現について、3巻の帯でジャズピアニストの上原ひろみは

「無音なはずの漫画から音が聞こえてくる」

とコメントを残している。

結末ではなく過程を楽しむマンガ

主人公 大の夢は、彼のセリフにもある通り「俺は世界一のジャズプレイヤーになる!」だ。
そして、BLUE GIANTの結末は「宮本大は世界一のジャズプレイヤーになる」だろう。
これはネタバレなどでは決してない。作品の構成が、大は世界一のジャズプレイヤーになるだろうと思わせるものになっているのだ。

BLUE GIANTには絶望的に強大な敵や世界に隠された謎などが今のところ出てきていないし、これからも出てくることはないだろう。
でも、そういった要素がなくても、BLUE GIANTはワクワクを感じさせてくれるマンガだ。
はじめからこの作品のゴールは決まっている。
そのゴールに向かって歩む中で、様々な人と出会い、そして別れ、時には華々しくステージに立ち、時には挫折する。
そんな中でも、大はひたむきにジャズに向き合い、河原でサックスを吹き続ける。
ゴールに至るまでのこういった道程を楽しむマンガ、それがBLUE GIANTなのだ。

大のテナーサックス

音楽に詳しい人がこの作品を読んだなら、大がめちゃくちゃいい楽器を吹いていることに気づくはずだ。
大が使用しているテナーサックスはH.SELMERのSUPER ACTION 80 SERIE IIだろう。市場価格も新品で60万円ぐらいする。

大は幼少から音楽の英才教育を受けているわけがなく、ジャズプレイヤーになろうとしたきっかけもジャズのライブがきっかけだ。
家が特別裕福なわけでもないし、友人が超絶金持ちとか楽器店を経営しているとかでもない。
親が音楽をやっていたり詳しかったりするでもなく、ごくごく普通のサラリーマンだ。

そんな大が、なぜこんなサックスを持っているのか。それもまた作中で語られる。
そのエピソードもすごくいい話なので、ぜひ読んでもらいたい。

こんな人にオススメ

ここまで、できるだけネタバレを避けるように紹介してきたので、正直実態がつかみにくい紹介だと思う。
とは言え、私がこの場で事細かに説明するよりは、実際に読んでもらったほうがいいと思うので、こんな感じで紹介を終えたいと思う。

最後に、BLUE GIANTをオススメできるタイプの人を付け加えておこう。
まずは、ジャズに興味がある人。これは敢えて説明する必要はないな。
次に、楽器に取り組んでいる人。日々練習する大に共感できるだろう。
そして、何かを目指して努力している人。努力を積み重ねる大に励まされるはずだ。
最後に、音楽系の作品が好きな人。「響け!ユーフォニアム」が好きな人は特に相性が良いと思う。

これらに当てはまらなかった人でも、Webで公開されている試し読みを見て、面白そうだと思ったら買いだ!

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